割増賃金
割増賃金とは労働者が時間外や深夜(午後10時~午前5時)・休日等に労働させた場合に支払わなければならない賃金のことです。割増賃金の率は時間外・深夜が1時間当たり25%、法定休日が35%です。また、1か月に60時間超の時間外労働に対しては50%以上増しとなります(当分の間(2023年3月31日まで)、中小企業には適用が猶予されています)。
割増賃金を算定するに当たって以下の手当ては除外されております。①家族手当、②通勤手当、③別居手当、④子女教育手当、⑤住宅手当、⑥臨時に支払われた賃金、⑦1か月を超える期間ごとに支払われる賃金のみです。これらは、例示ではなく限定的に列挙されているものです。これらに該当しない賃金はすべて参入しなければなりません。①~⑤の手当については、このような名称の手当てであればすべて割増賃金の基礎となる賃金から場外できるわけではありません。
【 割増賃金の計算例 】
《 時間外労働、深夜労働の割増率 》
所定労働時間9:00から17:00、翌日5:00まで働いた場合 (休憩時間1時間)
- ≪所定労働時間≫9:00~17:00
- ≪法定時間内残業≫17:00~18:00→割増なし
- ≪法定時間外残業≫18:00~22:00→割増率25%
- ≪法定時間外+深夜≫22:00~5:00→割増率50%以上
《 法定休日労働の割増率 》
9:00から24:00まで働いた場合(休憩時間1時間)
- ≪所定労働時間≫9:00~22:00→割増率35%
- ≪休日労働+深夜≫22:00~24:00→割増率60%以上
《 月給制の場合の割増賃金の計算方法 》
月給制の場合、1時間当たりの賃金に換算(残業単価)してから計算します。
≪ 月給額(各種手当を含んだ合計)÷1年間における1か月平均所定労働時間=A円 A=1時間当たりの賃金額 ※この金額にそれぞれの割増賃金率を掛けて1時間当たりの残業代を計算します。
≪具体例≫ 月給制のXさんの場合 ①基本給 180,000円 ②職能給 30,000円 ③通勤手当17,000円 ④住宅手当20,000円 ⑤年間所定休日125日 ⑥1日8時間労働 の場合
- (365日(1年間の日数)-⑤125日)×⑥8時間÷12ヵ月(1年間の月数)=160時間(1か月平均の所定労働時間数)
- ①基本給+②職能給210,000円÷160時間=1,312円50銭←1時間当たりの単価
時間外労働の場合 | 1,312円50銭×1.25=1,640円62銭(1時間当たりの単価) |
休日労働の場合 | 1,312円50銭×1.35=1,771円87銭(1時間当たりの単価) |
深夜労働の場合 | 1,312円50銭×0.25=328円12銭(1時間当たりの単価) |
※次の手当は原則割増賃金の算定基礎から除外します。①家族手当、②通勤手当、③別居手当、④子女教育手当、⑤住宅手当、⑥臨時に支払われた賃金、⑦1か月を超える期間ごとに支払われる賃金。ただし、これらの手当は名称ではなく実質によって判断します(例えば、住宅手当の名目で、全員に一律で支払われている場合には、その一律部分は算定基礎に含めます)。
※端数処理 1日の労働時間は1分単位で計算しなければなりません。端数を切り上げることは問題ありませんが、切り捨てることはできません。ただし、以下の端数処理は認められています。
- 1ヵ月の時間外等の労働時間数の合計に1時間未満の端数がある場合→30分未満を切り捨て、30分以上を1時間と切り上げて処理する。
- 1時間当たりの賃金額および割増賃金額に1円未満の端数が生じた場合/1か月間の時間外等の手当の合計に1円未満の端数が生じた場合→50銭未満を切り捨て、それ以外を1円に切り上げる。
※歩合制の割増賃金計算 歩合制とは「出来高払制」「請負給制」ともいい、「売り上げに対して〇%、契約成立1件に対して〇円」といった一定の成果に対して定められた金額を支払う賃金制度のことです。歩合制であっても法定労働時間を超えて労働した場合は、その部分について割増賃金が必要です。歩合制の場合は、歩合給の額を総労働時間で割って1時間当たりの賃金を計算します。
【 ある月の実績給(歩合給)の合計が180,000円であった労働者が、その月に法定時間外労働18時間を含めて180時間労働していた場合の計算例 】
- 180,000円÷180時間=1,000円 …1時間当たりの歩合給(歩合給÷総労働時間
- 1,000円×0.25=250円 …1時間当たりの歩合制の割増賃金
- 250円×180時間=4,500円 …歩合給の割増賃金率
- (注)歩合給の場合には1.0の部分はすでに歩合給の本体に含まれているために、この数字は1.25ではなく0.25となります。